片岡千恵蔵版の大菩薩峠シリーズの第三部。中里介山の原作を、猪俣勝人と柴英三郎が脚色、内田吐夢が監督した。撮影は三木滋人。
監督:内田吐夢
出演:片岡千恵蔵、中村錦之助、東千代之介、山形勲、月形龍之介、加賀邦男、左卜全、沢村貞子
大菩薩峠 完結篇(1959)のストーリー
将軍家直領二十五万石、甲府。机竜之助(片岡千恵蔵)は、枯草に覆われたつつじが岡の荒屋敷に起居している。勤番支配・駒井能登守(東千代之介)に私怨を抱く神尾主膳(山形勲)の命ずるまま、彼の剣は、甲州街道でいくつかの命を断った。兄の仇竜之助を求める宇津木兵馬(中村錦之助)は、主膳邸に出没した怪盗の犯行にこじつけられ、甲府城に捕われの身となった。祖父を失ったお松(丘さとみ)も竜之助を追う一人だ。兵馬の入牢を聞き、彼を救うべく主膳邸に住みこんだ。主膳の狙う女は、有馬家の娘お銀(喜多川千鶴)である。稀代の名刀伯耆の安綱とともに、つつじが岡の荒屋敷におびきよせたが、頭巾で覆われたお銀の半面は、鬼女の相に等しかった。お松の手から城内の絵図面を受取った裏宿の七兵衛(月形龍之介)は、持ち前の侠気から、兵馬らを救った。彼らは能登守に迎えられた。兵馬は流鏑馬八幡宮奉納試合に自ら買ってで、主膳召抱えの小森数之進を破った。その帰途、能登守は竜之助にゆだねられた名刀安綱の切先に立った。兵馬は能登守に代り、竜之助に向った。--能登守を斬らず、兵馬の剣をさけ、さらに主膳の焼打ちにあった竜之助は、お銀を伴い、街道をさすらった。やがてその足は八幡村へ--。宿命の神は、遂に竜之助をお浜の里へ招き寄せた。水車小屋、お浜の幻影をそこに見た竜之助は、魔刀を一振り、また一人女が闇に消えた。兵馬は元服していた。幼少よりただ仇討一途に生きてきた彼とお松を結びつけた不思議な糸は、竜之助であったかも知れない。二人は大菩薩峠に向った。豪雨に狂う笛吹川。盲の竜之助は、その濁流の向うに、わが子郁太郎の泣き声を聞いた。「危い郁太郎、父の手にすがれ……」憑かれたように、引きこまれるように、竜之助は水中に姿を消した。それを見つめる兵馬。彼らを包み、見下すものは屹然と立つ大菩薩の嶺であった。
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